ヨーロッパにはオーガニックシーソルトがあります。

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2022年のクリスマスにとても嬉しいニュースが飛び込んできました。15年来、日本に輸出しているポルトガル南部アルガルベのシーソルトが、オーガニック商品になったというのです。古代からの塩田を守り続けている職人たちの苦労がやっと報われたと思って大喜びしたのですが、それもつかの間でした。なんと日本に塩を有機とする規定は存在せず、EUで認証されても日本では認めてもらえないのです。

この日本の状況は直ぐにでも改善して欲しいものです。まずは多くの人に塩の製法、また種類について知っていただくことが改善への近道だと思いますので、今日は長くなりますが塩について説明させていただきます。

塩には幾つかの種類があります。

岩塩: 『海の化石』と呼ばれ地殻変動で海水が地上で乾燥し、長い時間をかけて固まったものが岩塩で、世界で使用されている60%の塩がこれを原料としています。鉱脈から削り出したり、水を加えて溶かしくみ上げて採掘。採掘された岩塩には重金属など不純物があるので精製し食用にします。日本には鉱脈がないので、岩塩というもの、また岩塩が原料の塩はすべて外国産。

湖塩:岩塩と同じように地殻変動で地上に閉じ込められた海水が濃縮されたものが、湖塩で代表的なものが死海のもので、海水の約8倍の塩分を含んでいます。干上がった湖塩を採集し粉砕したものと、湖水を精製したものがあり『天日湖塩』と単に『湖塩』があるようです。

天日塩: 海水を塩田に引き込んで、太陽熱と風のちからで水分を蒸発させた塩です。海水原料の塩は、全世界の生産量のわずか4分の1程度。天候に左右されるので、生産が最も困難な塩。

©日本海水

海塩: 天日塩と、海水の水分を脱水・蒸発させてつくる『煎ごう塩』がありますが、釜を使って海水を蒸発させるのに多大なエネルギーが必要。精製されている海塩も多いので注意が必要です。以下が代表的な日本の塩製法。

平窯

図:個性ある塩を造る「平釜」

©日本海水

入浜式

図:入浜式塩田 ~ 近世から近代 ~

画像©日本海水

塩を煮詰める、煎ごうのプロセス。真空式蒸発缶を使うと、塩の結晶は液の中で成長してサイコロ形になりますが、特殊な「平釜」で液の表面で成長させると、「トレミー」という逆ピラミッド形や、薄片状の「フレーク」という形になります。これらの形が、溶けやすい、付着しやすい、粉と混ざりやすいなどの性質につながります。煮詰め方によって、塩の個性が変わり、用途も広がるのです。世界的に有名な『マルドン』というフレーク状の海塩は、この製法で生まれます。

1972年以降は真空蒸発管で煮詰める方法

図:現在の主な製塩法

イオン交換膜製塩法

現在日本で作られている塩の90%以上がこの製法を利用しています。

図:イオン交換膜により、世界一安全な日本の塩

 

食塩: かん水を上記の真空蒸発管を使って煮詰める製法から、現在ではイオン交換膜製塩法で作られる塩化ナトリウム。

食卓塩: 溶解・立釜法(密封された釜)で作られます。海外から輸入した天日塩を溶かし不純物を取り除き、濃い塩水を作り煮詰めて塩の結晶を作ります。

画像©塩百科

以上が日本で得られる塩の一般的な情報で、食塩の作り方は最も安全なものだと書かれています。ここから先はなぜオーガニックとそうでない塩が区別されているかの理由をお伝えします。ヨーロッパでの塩づくりへの認識の違いが明確になると思います。

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上の表は、塩は海水から太陽熱と風の力でつくるべきものであり、赤でNOと示されている岩塩を原材料とするものは一番ダメです。理由は鉱脈でのダイナマイト、大量の水の使用による土砂崩れやエコシステムの破壊が挙げられています。強制的な蒸発製法を伴うものは過剰なエネルギー消費が環境に悪い事、添加物や補助剤の使用もNOと指摘されています。

サステナブルな営みが重視されている今、これらの理由から伝統的な塩田で、太陽熱と風の力で生まれるヨーロッパの海塩はオーガニックと認証を受けることが出来るのです。もっと細かい条件もあるのですが、大きな違いはこんなところです。

日本の関係機関は、日本の製塩法は世界一安全と判断するかもしれませんが、何がどんな風に安全なのかをもっと詳しく知る必要があると思います。部分的な側面だけを見て安全と語るのは危険です。確かに日本で塩を天日で作ることは難しいと思いますが、どの地域でも不向きな生産物というものはあり、それを見直して改善していく事が必要だと思います。

一日も早く日本でもオーガニックシーソルトが認められる日が来ることを願って、今日は塩についてお伝えしました。

 

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