Guadalupe グアダルーペ Part 3

Our travel sketch

トラベルスケッチ入り旅の回想録を始めます。コロナウイルスで、スペインのGDP25%に当たる観光・サービス業への大打撃を見て、これからは観光ではなく本当の意味での【旅】の時代が始まると感じ、やっとこの回想録を記す時が来たと思いました。これまで続けてきたブログ記事にプラスして、観光ルートにはほとんど入ってこない美しい町や村について伝えたいと思います。

Sketch by ©Angel Gomez-Moran Santafe 2014 Monasterio de Guadalupe

美しいスペインの中でも特にその広大な自然と建造物の偉大さで、秀でて優れた地域がエクストレマドゥーラだと思います。どうしてもアメリカ大陸発見の歴史と関連付けられ、日本人にはあまり縁のない地域ですが、この地を訪れないでスペインを深く知ることは困難です。

ここグアダルーペは、数多くあるマリア信仰の中でもスペイン最古のもの。歴史上重要な人物は全員ここを訪れていると言えます。スペイン人歴史学者フェルナンド・ガルシアデコルタサールの著書で代表的な人物が明記してありましたので、私も皆さんがグアダルーペに関心を寄せられるようにリストアップします。

誰もが知るイサベル女王とフェルナンド王。彼らはここグアダルーペに別荘を持っていたほど、この地域がお気に入りでした。彼らの素晴らしい別荘は山中に残っています。コロンブスを乗せたキャラベル船の準備の契約書は、ここグアダルーペ修道院内でイサベル女王が署名。その後、初回の航海から帰国したコロンブスは、インディオと共に女王の謁見にここグアダルーペに訪れ、初めてインディオはここで洗礼を受けました。その儀式に使われた石の洗礼フォントは、現在修道院前の広場の噴水になって残っています。(スケッチに描かれている右下にある噴水がそれです)

修道院は14世紀創立、以降歴代スペイン王は全員マリア参拝に訪れています。フェリペ2世は何度も訪れているはずです。メキシコ征服を成し遂げたコルテスは、マリアに感謝の祈りを捧げるために航海後直行。レパントの海戦の指揮官でありフェリペ2世の庶弟ドン・フアン・デ・アウストゥリアも海戦の勝利を祝い、感謝の意を表してマリアを参拝。歴史ファンが熱くなるストーリーが多々残っています。

このレパントの海戦の戦利品をドン・フアンは修道院に祀っているのですが、それはこの修道院内に残るスペインで最も豪華なバロック期の聖具室に今でも飾られています。

©Ala Denon

写真だけでは、この空間の美は伝わらないのですが、ここにレパント海戦の戦利品であるランタンが天井から吊るされています。このカラー写真ではよく分からないのですが、下に古い写真を載せましたので、それと比べて見てください。

©abcblogs.abc.es

この真鍮製のランタンは、オスマントルコのスルタンの戦艦にあったもので、戦旗やスルタンの軍服など同様重要な戦利品だったのです。レパントの戦いでカトリックがイスラムに敗戦していたら、イスラムの侵攻が続き今のヨーロッパはなかったはずですから、レパントの戦利品は火災などで焼失してしまったもの以外は、今でも大切に管理されています。フェリペ2世は父親カルロス5世と比べると、お坊ちゃん過ぎるところがあり人間的な魅力が足りないのですが、庶弟であったドン・フアンは全く逆で完全なるヒーローでした。私も歴史的人物の中で大好きな人物のひとりなので、ドン・フアンゆかりの場所には多く訪れていますから、このランタンを見た時の感動は言葉に出来ません。聖具室はスペインで最も豪華絢爛な空間のひとつで、17世紀スペインの天才画家スルバランの絵画が8点もある至福の場です。そこでレパントの海戦まで絡んでくると、もう想像することばかりで夢と現実の区別が出来なくなるくらい面白い体験が出来るところです。

これがドン・フアン。スペインの歴史上最も男前で勇敢な軍人のひとり。31歳の若さで亡くなってしまいましたが、そのストーリーはまた今度。

グアダルーペのスルバランの一枚。8点どれもスルバランの傑作です。2年間この修道院に住んで作品を完成させたそうです。もう5回はこの聖具室を訪れていますが、残念なのはこの宝を守るために、見学はガイド付きでタイムリミットがあること。5分や10分ではしっかり観る事が不可能なのです。残念ながら写真撮影も許されません。写真を撮っても実物の良さは伝わらないので、スペインを訪れたなら行くべき場所なのです。巡礼のように、ここまで足を運び、短時間でこの宝を心に刻まなければいけないのです。

これが8点の中でも最も偉大と言われている作品。聖ヒエロニムス。グアダルーペはマリア信仰ですが、修道院自体はジェロニモㇲ派(ヘロニモス派)のものです。

最後に黒いグアダルーペのマリア像。とても小さい素朴な女神像ですが、眼力がすごいもので見ていると吸い込まれます。参拝は修道士に案内されながら行くのですが、私はカトリックではないのですが、この女神様のパワーは信じているので、時々引き寄せられて参拝しています。いつ行ってもパワーをもらい感動しますが、歴代の王侯貴族、芸術家、コルテスのようなコンキスタドールや南米に渡ったフロンティア精神のある偉大な人々の香りが、今でも漂っているような空間がこのグアダルーペという地です。

スペインに来たら参拝せずにはいられないところで、古からの女神があなたを待っているはずです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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