スペイン陶器巡り ①タラベラ焼き

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タラベラ焼きで世界に知られるタラベラ・デ・ラ・レイナの町。紀元前からタホ川のほとりに存在する重要な町でした。現在の町の名前は『女王の町タラベラ』を意味しています。封建時代それぞれの町や村は特定の王家、有力者に属しており、タラベラの場合は14世紀ポルトガルからスペインに嫁いできたマリア・デ・ポルトガルに、アルフォンソ11世がこの町を贈った事が由来です。

ローマ時代はCaesarobrigaと呼ばれるルシタニアの主要都市であり、現在この町を囲む巨大な城壁にはローマ時代建造の痕跡が多く見られます。西ゴート、イスラムの侵略を受けても広く繁栄したタラベラの町には上質な土があり、アラビア様式の陶芸文化が花開いていました。16世紀その陶芸をリニューアルしたのがフェリペ2世。彼が建造したエル・エスコリアル修道院のタイルや陶器は、オランダ、デルフト窯からのノウハウも取り入れタラベラで焼かれたものでした。

この部屋がフェリペ2世のエル・エスコリアル修道院内にある寝室の様子です。壁が腰の高さまでタイルで覆われていますが、これはアラビア文化の影響でスペインにある独特の暮らしのスタイルで、南部アンダルシアには今での根強くこのスタイルが残っています。ブルー&ホワイトまたは、ブルー&イエローのコンビネーションが主です。エル・エスコリアルではタイルだけでなく、調度品もタラベラ焼きのものが多く、特に薬剤師が使用していた薬局の瓶や壷の美しさが有名です。

この壷は1575年頃タラベラで焼かれたもので、エル・エスコリアル修道院の紋章が入っています。スペイン陶器らしい筆使いとぽってりとした陶器厚みが魅力です。

タラベラ焼きは、南米にも広く伝わりメキシコではタラベラと言えば陶器を意味し、陶器の代名詞になっているほどです。2019年にはユネスコ世界無形文化財にも登録され、この長い陶器の伝統は守られるようになって来ていますが、実際には過去30年ほどタラベラの町を訪れ陶器を購入していますが、日々工房の数は減っており危機的な状況は、無形文化財指定になっても続いています。

スペインのこの古いタイルを使うインテリアスタイルは、パラドールと呼ばれる国営ホテルで守られてきていましたが、最近パラドールもスペインのスタイルよりもインターナショナルなスタイルを取り入れているところが多く、もっとスパニッシュスタイルが重視されることを願うばかりです。私は個人的に出来る限りこのタイルを使ったスタイルを取り入れていますが、もっともっとこのスペイン陶器の良さを日本で知ってもらいたいと思いながら日々暮らしています。

ここまで代表的な陶器やタイルを紹介しましたが、もうひとつ修道院や一般人が使っていた陶器のスタイルがあります。これを今復活させたいと思っていますが、どんなものかちょっとだけ紹介します。

これはフランシスコ・デ・スルバランという画家の作品。17世紀スペイン、特にセビリャを代表する天才画家。柔らかく優しい雰囲気の宗教画が多く残っていますが、この絵の中に登場するシンプルな陶器を一般人は使用していました。

タイル同様、ブルー&ホワイトの色付けが主流ですが、やっぱり厚みのある質感とイレギュラーな絵付けが魅力です。

この素朴で飾り気のない形と質感がスペイン陶器をとても良く表していると思います。

これは聖女テレサの修道院の様子ですが、スペインのスピリットが凝縮されている光景です。

最後に最近日本に送ったタラベラ焼きをひとつ。優れた絵付師を見つけるのもご縁なのでしょうが、やっとタラベラを深く理解している女性陶芸家と巡り合いました。100年以上の歴史を持つ窯元。どこまでタラベラ焼きを今の時代に残していけるかチャレンジしているパワフルな人です。

タラベラ焼き、暮らしに取り入れていくと陶器の魅力がジワジワと伝わってきます。これから伝統的カラフルなものと白とブルーのシンプルなものを組み合わせて、ご紹介していきたいと考えています。

 

 

 

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