鱈と言っても色々ありますが、ヨーロッパで鱈と言えば干し鱈。塩漬けにして干し保存可能にした優れた保存食で、スペイン、ポルトガル、フランスでは特に良く食べられていた魚で切っても切り離せない伝統食でありシンボル的な魚です。バイキングが10世紀ごろ最初にこの食べ方をヨーロッパに広げたそうですが、当時のものはカラカラに乾燥させていたので、相当噛んで食べていたようです。
カトリックの国々では、金曜日禁欲のために肉を食べない宗教的な慣習があるので、干し鱈は貴重な食糧でした。イースターの前40日間は、特に鱈を使った料理が豊富に残っています。非常にリーズナブルな魚だったのですが、魚の部位によって素晴らしい素材となので、庶民から上流階級の食卓まで幅広く楽しまれた正に魚の王様です。
興味のある方は、バスク地方の漁業の歴史を調べることをおすすめします。バスクは鉄が豊かな地域だったので、鉄を活用したツールを基に造船技術を磨き、ガリシアと共に大航海時代以前からナオのような造船で栄えていました。マゼランの木造帆船もバスクの町サラウスZarauzで建造されたもので、歴史に残る帆船が数多く造られていました。
マゼランの世界一周500周年を迎えていますが、コロンブスもマゼランも帆船を知ればしるほど当時の人の勇敢さと体力、精神力、航海技術や海洋学・天文学の知識の豊富さに感服します。写真は世界一周を果たしたビクトリアのレプリカです。こんな感じの船を漁業でも使っていたはずです。鱈や鯨の歴史は、ヨーロッパで戦争の原因にもなり貴重なエピソードばかりです。下にアップした本は今度買って読もうと思っていますが、昔ニューファンドランド島あたり捕獲できたタラは最大30キロくらいまであったそうです。表紙はそんなタラを運ぶ漁師の姿です。
タラ料理はポルトガルが365日毎日タラを食べても、同じ料理にはならないという程バリエーションがありますが、スペインのタラ料理はちょっとレベルが違うものがあります。特にスペイン北部バスク地方やガリシアでは、芸術的と言えるタラ料理があり感動します。タラだけを販売する有名専門店もあるほど本格的です。
こちらはマドリードにあるCasa de Bacalaoタラの家という名前の老舗専門店。タラがパーツ別に販売されていますが、ノルウェー産のタラが現在は最高級です。
よく思うのですが、世界的にもトップのグルメ大国である日本で、なぜこの最高級の塩タラを食べる習慣がないのが不思議です。そのくらい魚好きにはたまらない美味しさです。
ガリシアのサンティアゴの市場には、こんな風に塩抜きまでして販売されています。超便利で羨ましいお店です。高級な塩タラは魚肉の厚みがあり、塩抜きにも時間が掛かるのです。
こちらはCasa de Bacalao。マドリードの店内の様子です。どのくらい大型のタラが販売されているか分かります。大きく厚みがある切り身が食感も味も旨みが凝縮されていて理想的ですが、調理の仕方次第でパサついてしまうのでテクニックが必要です。
そして、こちらがBacalao al pil pilバカラオ・アラ・ピルピルと呼ばれる芸術的なタラ料理。バスク料理の代表です。この料理にも歴史があるので、いつか皆様にお伝えしたいと思いますが、オリーブオイルとタラのコラーゲンだけで作るスペインが誇る一品。一度これをベストな状態で食べたら、タラは大好物になるはずです。
オリーブオイルを使った歴史に残る一皿でもあります。
ポルトガルもスペインもとにかくタラ料理は豊富ですが、スペインのこのタラ料理はワンランク上の傑作料理です。
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