これからシリーズで、スペインをメインとするオリーブオイルのDOP原産地呼称を獲得している地域と、その地のオリーブオイルをご紹介していきたいと思います。
私のオリーブオイル輸入業も20年に近づき、ほとんどのDOPを訪問しオイルを味わっているので、その地域の特徴やオリーブの事を個人的な視点でお伝えしたいと思います。
まずは、今年DOP50周年を祝っているスペインでも最も古いDOPレス・ガリーゲスについて。ここはアルべキーナの故郷であり、長年小さいオリーブオイル農家Olicatessenと取引をしています。最近新たにオリーブ仲間が出来たので、改めてこのレス・ガリーゲスの奥深い歴史を再確認したばかりです。
これが2025年5月の時点のDOPを表す地図で、31の優れたオリーブオイル生産地がEUで認証され保護されています。世界一はイタリアでスペインよりも小さい国なのに42か所のDOPがあり、どのくらいオリーブ文化が発達しているか分かります。
このDOPを代表するオリーブがアルべキーナです。今や世界中で栽培される大人気品種ですが、非常にデリケートで早熟の小さい果実のオリーブです。バターのようなオリーブオイルで、お菓子作りにも最適。スペイン南部のパンチのあるオリーブとは全く違うオリーブです。
夏はまるで砂漠地帯にいるように気温が高くなるので、灌漑システムのない土地でオリーブはどうやって生きているのか不思議でしたが、地下水があり、農家の人々は地下水を利用して栽培していると教えてもらいました。
ここではオイルだけでなく伝統的な漬物文化もしっかりと残っており、スペイン中で最もおいしいと思うオリーブペーストや苛性ソーダなしのテーブルオリーブも作られており、日本でも知る人ぞ知る優れもののオリーブとして広めています。なんと老舗海苔店では、海苔に合わせるオリーブペーストとして利用してくれています。
オリーブオイルを購入する時、特に裏面のラベルを見ると思いますがEUが発行いている丸の赤いマーク(下をご覧ください)があったら、これは保護されている優れた特定の原産地でありDOPが付いていると理解して下さい。
真ん中のマークがDOPマークで、左側のかわいいマークがレス・ガリ―ゲスという地区が保証しているというマーク。DOPマークがあったら必ず特定の産地のマークが一緒に掲載されます。
2月の終わりちょうどアーモンドが満開だった時に、数年ぶりにレス・ガリーゲスを訪れました。この時は最新の設備を持ち、スペイン農水省も最も優れた搾油所として賞をあたえたCuadrat Valleyを訪問させていただきました。ここではオイルツーリズムにも力を入れています。
大変モダンなオリーブ農園で、搾油場には特注の豪華な設備が揃っていて、その高級さに驚かされました。オーナーはフランスに住むスペイン人でボルドーでワイナリーも運営しているそうで、故郷スペインにオリーブ農園をつくることが長年の夢だったそうです。
ここが特殊なのは同じアルべキーナでも、搾油する時に種を抜くオイルづくりをしているところです。10月初旬に搾っているようですがアルべキーナとは思えないグリーンさとスパイシーさがあり、この地域の他のアルべキーナとは印象が全く違います。オーガニックで早摘みのアルべキーナ、普通のアルべキーナよりもっと早摘みで初体験のアルべキーナでした。いつか日本の皆様にもお届けしたいくらいです。
オイルはこんな豪華なタンクに、区画別、日程別に保存されていきます。
搾油工程は通して真空状態を保っているというすごさ。窒素も自家工場で作られているほどです。色々な工場を見ましたが、特に設備投資が徹底している素晴らしい工場でした。優れた搾油工場で使われている圧搾機など搾油に関連する機会はすべてオーダーメイドが多いです。こだわりが搾油工程の細部に施されていることを意味しており、スタンダードな機械ではできない事が多々採用されているのです。
農園内にはカタルニア内陸レリダ県の伝統料理も創作料理も楽しめるレストランがあり、テイスティングもベストな理想的な空間で実施できます。
特別なテイスティングを友人のおかげでさせていただきましたが、ローカルな果物のコンフィチュールとオリーブオイルのペアリングなど、旬の食材をフル活用しています。
ローカルチーズにコンフィチュールと地元の有名な洋梨。こんな料理を食べながらオリーブオイルのテイスティングをすることは、思い出に残る最高の体験です。こんど日本のファンの皆様向けにスペシャルオイルツアーを組む予定です。
さて種を抜いて搾るオリーブオイルは、ローマ時代から最高級オイルといわれており、オリーブオイルの歴史に興味のある人は絶対に試した方がよいオイルです。古代ローマ人のオリーブオイルへのこだわりは現代人をしのぐもので、オイルは色々なカテゴリーに分かれていました。その中でもローマ皇帝などが使ったオイルは、早摘みの種なしと限定されており、コスメとして裕福な女性が利用したのも種抜きだったという記録が残っています。
こんな最新のレス・ガリ―ゲスを体験させてくれた友人のヴィオラとは、オリーブオイル取引を通じての長いお付き合い。オリーブオイルと共に人生を楽しむ大切なオリーブ仲間です。
これからイベリア半島にある個人的に訪れたことのあるDOPを、この場でご紹介していきます。レス・ガリーゲスはワイン界で世界の注目を浴びているプリオラートにも近いので、訪問する際には両方の地区を巡ることをおすすめします。地中海の風を感じながら、アルべキーナの故郷を訪問することは、アルべキーナ好きには最大の愉しみになると思います。
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