Guadalupe グアダルーペ Part 1

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これは2014年のブログの改訂版で、Part2へと続けます。

時間が過ぎるのは早いもので、スペインの中でも特にお気に入りの町のひとつを、前回2009年訪問してからあっという間に5年近くが過ぎていました。数ヶ月前のことのようですが…

今回は、グアダルーペ巡礼をする人達が使う保守的な順路で旅をしてみました。修道院から4キロのところに写真のチャペルがあります。15世紀創立のゴシック様式の素晴らしいチャペルです。昔からグアダルーペを訪れる人は、ここに到着するとひざまずいて祈りを捧げたので、Humilladeroという名がついています。

ここにはセルバンテスが、牢獄に隔離されていた時の鎖を奉納するために、巡礼をしながら訪れたと聞き、ずっと訪れてみたかったのです。何のストーリーも知らないと通り過ぎてしまいそうな場所ですが、歴史的に有名な多くの人々が、グアダルーペ巡礼の際はここをお参りし必ずひざまずいて祈りを捧げてから、修道院本堂、黒い女神が祀られている場所へ向かったのです。

グアダルーペの町は、山間部の非常にアクセスが困難な所にあるので、このように中世からの美しさを、そのままの姿で残しています。このパノラマを見るだけでも、非常に特別な場であることは理解していただけると思います。

正面玄関は、スペイン独特のゴシック、ムデハル様式の傑作です。スペイン美術の最大の魅力のひとつがムデハル様式です。アラビア文化とキリスト教文化が見事に融合し、こんな美しい建造物になっています。イスラムの影響はふんだんに散りばめられた幾何学模様が表していますが、偶像崇拝を禁止していたイスラム美術が、スペイン、カトリックではこのように解釈され、偉大な美の世界を創り上げています。

写真の噴水には、興味深いストーリーが残っています。柱の部分は普通の噴水と変わりませんが、この噴水には洗礼儀式に使われる泉Pila=石桶のようなものが乗せられています。いつどういう事情で、修道院の中から外へ出されたのかは知りませんが、実はこのPilaでコロンブスが最初の航海で連れてきた、南米インディアンが洗礼を受けているのです。これは有名な話で、グアダルーペを訪れる人は皆聞く話だと思うのですが、まさか当時のPilaが町の広場の噴水として設置されているとは驚きでした。町の老人達は、いい加減に教会の中で保存して欲しいと心配していましたが、子供たちがこの噴水で水遊びに夢中だったので、確かに再び屋内に戻した方が良いと私も思いました。

修道院の最も重要な祭壇がこちら。
イサベル女王の兄エンリケ4世が母親と共に埋葬されています。この王に関係する建造物は、どこへ行ってもスペイン15世紀の豪華絢爛さを残しているものが多いので、歴史的な評価は低い国王でも、個人的にとても関心を持っています。ホモセクシュアルでありバイでもあったという説があり、王のお気に入り家臣の話もあるのですが、それについてはまたチャンスがあったらお話します。日本だったらNHKの大河ドラマに十分なるストーリーです。

今回はそんなエンリケ王4世の墓をしっかり見学しました。立派な一流の美術品で囲まれた棺は、深い感動を呼ぶものでした。修道院内にある刺繍博物館は、中世からの刺繍を保存する貴重なスペインナンバーワンのコレクションです。その中にエンリケ4世が埋葬された時に身に着けていたビロードも展示されています。モスグリーンの美しいビロードなのですが、あまりエンリケ4世に興味を持って来訪する人は居ないようで、学芸員は説明してくれませんでした。ベネチアンスタイルの15世紀のビロードが見たい方は、注意してショーケースをチェックしてください。

こちらがムデハル様式傑作の中庭。
アラビアなのかヨーロッパなのか、複雑な錯覚を起こすような空間ですが、ムデハル様式の宝物です。ガイドさん同行でしか見学できないのですが、修道院に併設するホテルに宿泊していれば、いつでもこのパティオに入って見学が可能です。パラドールを好んで宿泊する方も多いと思いますが、グアダルーペを訪問したら、この中庭で過ごす時間を多く取るべきだと思いますので、あえてパラドールよりも修道院併設のホテルをお薦めします。早朝や夜晩く、この中庭に一歩一人で踏み込む時の空気感は、誰をもタイムスリップさせてくれる貴重なものです。スペイン中にある無数の修道院の中でも、秀でた体験をさせてくれる建造物であること間違いありません。

中庭以外での写真撮影が内部では許されていないのですが、スペインに存在する多くの教会の中でも、バロック期最高傑作といわれるSacristia=聖器室があります。豪華絢爛なサロンで、エクストレマドゥーラが誇るスルバランZurbaranの傑作が10展あります。これについてはPart2でお伝えします。

こちらもゆっくりと鑑賞できないのですが、ただただ感動のため息が出る空間です。これは一回二回の訪問では吸収できるものではなく、知れば知るほど深めたくなる事が多く、どうしても数年に一度は行きたい衝動に駆られ足を伸ばしています。

この旅ではパラドールを応援するために、パラドールに泊まりました。パラドールのトップは政治家なのですが、それが原因で経営困難になったのかどうかは定かではありませんが、5年前(2014年当時)は非常に多くの問題を抱えていました。観光大国であるスペインが、パラドールのような企業をしっかりと守っていけないことは大問題です。パラドールの起源についても、スペイン観光のベースを作った偉大な人物の歴史があるので、いつかブログにまとめます。

現在、コロナウイルスの影響で世界トップ3に入るスペイン観光業も、大きければ大きいほどダメージも大きく、問題を通り過ぎた打撃を受けています。私に出来ることは何かと考えてた時に、出来る限りスペインが世界に誇れる町や文化、歴史について書くことだと気づきました。一人でも多くの人がスペインを訪れる切っ掛けになるようなストーリーを、ひとつでも多く書いていこうとコロナウイルスのおかげで決心しました。

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