漫画『アルカサル』の舞台トルデシーヤス中世の宮殿 Part 2

Castilla カスティーリャ

ドン・ペドロと呼ばれるスペイン王は14世紀の国王。まだ中央集権制度が確立されていない時代の国王なので、戦争続きの人生だったのですが、青池保子さんの漫画でも描かれているように美しいものが本当に好きだった国王だと思います。ライフスタイルもセビリア育ちですからアラビアンスタイルがお好みで、君臨したのはたった16年間にも関わらずスペイン全国にゆかりのアラビア様式宮殿や城を残しています。その数の多さには圧倒されるばかりです。

ドン・ペドロの父アルフォンソ11世が建造し、ドン・ペドロが完成させたというこのトルデシーヤスの宮殿は後に修道院となってしまっていますが、あちらこちらに宮殿であった時代の美しさが残っています。上の写真の壁の様子も美しい波を打つようなアーチで飾られた美しいもので宮殿の豪華さを想像させてくれます。
ここで特に興味深いのは14世紀の浴場跡です。王家の人々が使った浴場が当時のままの状態でよく保存されています。漫画の中でもドン・ペドロのお風呂好きな様子は登場しますが、洗浄にも浴場を必ず持ち運んでいたという記録も読んだ事があるので、この宮殿内に残る浴場を見た時は彼の姿が目に浮かぶようでした。
(現在、写真撮影は禁止されているので、写真は幾つかのブログからお借りしました。)
周辺に残っていたローマ時代の大理石の柱などを再活用している部分もあるそうですが、こじんまりとした美しいトルコ風呂のようなスタイルの浴場です。
壁にはドン・ペドロの父の愛人レオノール・デ・グスマンの紋章が残っています。一見獅子なのでカスティーリャ地方の紋章のようですが、まさか愛人のものでした。こんな風に残っているところを見ると、ドン・ペドロも彼の娘たちも愛人のことをあまり恨んだりしていなかったように思います。
ドン・ペドロはこのトルデシーヤスの宮殿だけでなく、ヨーロッパに残る最も古い王家の宮殿セビリヤのアルカサルも建造しているので、実はセビリヤにも素晴らしい浴場があるのです。
天井などはドン・ペドロ以前の建造物のものですが、しっかりと浴場として使われていたので、今でもここはドン・ペドロの夫人マリア・パディーリャの浴場と呼ばれています。
14世紀の王のラブストーリーから数々の愛人、浴場跡などがしっかりと残る国王はスペインの歴史の中でもドン・ペドロ以外にはないと思います。その国王のストーリーを膨大なリサーチと共に、最高に魅力ある漫画に仕上げた青池保子さんは歴史を語る天才だと心から思います。皆さんももしスペインを訪問するチャンスがあるなら、是非この作品を読んでから旅をするとスペインが何十倍も楽しくなると思います。

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