スペイン・ポルトガルのタイル史

Art

スペイン・ポルトガル両国は美しいタイルの宝庫です。特にポルトガルではタイルが一種のシンボルになっていると言っても過言でないと思います。タイルの歴史はイスラム教徒からの影響ですが、幾何学模様のイスラミックタイルがイベリア半島で進化しより美しいモノに変容しています。

ここは15世紀創立のサンタ・パウラ修道院。ルネッサンス期のタイルが多く残っています。セビリヤ・トゥリアナの偉大な伝統タイルがじっくりと鑑賞でき夢のような場所です。ツーリストがあまり訪れる場所ではないので、昔ながらのセビリヤを垣間見ることが出来る空間でもあります。

こちらの墓はポルトガル王家とのつながりがある軍司コンデスタブレのもので完全タイル貼り、この人物がセビリヤタイルの美に魅了されていたことが明らかです。実はこの人物がセビリヤのタイルの素晴らしさをポルトガルに伝達したと言われています。

同じセビリヤの街に残るサンタ・クララ修道院がこちらで、現在修復作業が続いています。こちらはサンタ・パウラより200年も古い13世紀の修道院。より大規模にスペインタイルが残る場所です。

床は大量生産タイルで修復されてしまっていて残念ですが、壁面全てルネッサンス期のタイルで覆われているチャプターハウス、スペイン語ではSala Capitularと呼ばれます。一種の会議室のようなところですが、食事もここで実施されたので古いキッチンも隣接しています。

100名は軽く入る見事な空間で、この長いテーブルの上で聖書についてのレクチャーを受けるだけでなく、裁判なども実施されたていたそうです。

肝心なタイルがこちら。15世紀以降ルネッサンス期のタイルの様々なパターンが貼られています。この焼き方のテクニックが『クエルダ・ダ・セカ』と呼ばれるスペイン独自の技術で、イランが発祥地という説と10世紀頃スペインで生まれたという説があります。私はこのタイルの大ファンなのですが、ここの作品はいくら観ていても飽きません。幾つかパターンをご紹介します。

こんな当時のプランターの様子もデザインされていて、今も昔も変わらない植物への愛情も感じられます。

タイルは天井にも使われており、どれほどこの空間が鮮やかなものだったのか驚くばかりですが、床もきっとタイルとテラコッタのモザイクだったと思うので、アンダルシアの豊かさは長い歴史の積み重ねであり、これを守ってきた人々の愛情の賜物です。

こんな豪華絢爛なアンダルシアの宮廷を15世紀に訪問したポルトガル王家の人々が、このスペイン特有のスタイルに感銘を受けポルトガルにタイルを輸入し始めるのがポルトガルのタイル=アスレーショの歴史のはじまりです。

こちらがポルトガル・コインブラの街に残る最も重要なロマネスク様式の大聖堂。12世紀に建造が開始されていますが、壁面はセビリヤから16世紀に輸入されたタイルで飾られており、華麗な装飾はポルトガルらしいエレガントさが感じられ、セビリヤとは一味違う魅力があります。

タイルでこんなに空間がエレガントに変容出来ることは、スペイン・ポルトガルを訪問しないと分からないかもしれません。スペイン、ポルトガルを毎月のように行き来している私にとって、ポルトガルタイルの特殊な世界のはじまりがセビリヤ由来と知った時は本当に嬉しい感激の瞬間でした。シントラの王宮に残るタイルもセビリヤタイルが使われているので、訪問する際は是非じっくりとご覧になってください。コインブラにある別の教会の内部。こちらではスペインタイルではなくポルトガル製のタイルが壁を飾っています。クエルダ・セカの技法を使ったタイルではないことが分かると思います。スペインから伝わったタイル文化は直ぐにこのようにポルトガル製タイルの製造にもつながり、ポルトガルは独特のタイル文化を形成し始めます。

時代と共にタイルはシンプル化し、18世紀になるとポルトガルのブルー&ホワイトのタイルが主流になり、ポルトガル全土で見られるようになります。

スペインとポルトガルに存在するこのタイル文化は、世界に誇るべきもので多くの方に知って体験して欲しいと心から思います。タイルは一枚でもあると暮らしを豊かにしてくれますし、タイルの持つ色合いは癒し効果だけでなく人を元気にしてくれるパワーも放っていると思います。

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